本屋でふと手に取った「EYE」というphoto magazine。
何かに導かれるように、その雑誌を購入した。
インドの北部チベット圏のラダックという場所に、ひょんなことから旅をすることになった一人のフォトグラファーが撮影した写真と素敵な文章が、そこには載っていた。
写真もとても素敵なのだが、文章を含めた全体の構成がとても気に入った。
東京で活躍している著名な写真家なのかと思いきや、最後のページの発行人・編集人に「島根県松江市」在住の文字。どんな人かとても興味が湧いた。その日のうちに、メールで取材依頼をした。
次の日、「今日時間つくれますよ」という返信がきた。
わくわくしながら、事務所に向かった。
自宅兼事務所の建物の玄関で、犬を連れたご本人が笑顔で出迎えてくれた。
2Fの事務所に案内されると、若いアシスタントの山下くんがコーヒーを運んできてくれた。
「はじめまして、伊東です」
まっすぐ目を合わせながら、優しい笑顔で挨拶を交わしてくれた。
伊東昌信さん。
最初の1年半は地元のカメラマンに師事し、その後独立して今年でちょうど5周年になる松江市在住の写真家で、nob ito photo worksの代表だ。
カメラマンになる前は、医薬品の営業をしていた伊東さん。
毎日がとてつもなく面白くなかった。
自分の好きなことを仕事にしたい、そんな思いから、写真家への道を志す。
1年半ほどアシスタントをしていたが、ある飲み会での友人の一言で、独立を決意する。
伊東さんが29歳の頃だ。
何の計画もなく独立した伊東さん。
「昔から色々と計画するのが嫌で。何かうまくいかない気がして」と、嫌みなくさらっと言う。
少しベタだが、スタート時の苦労話を聞いてみた。
「苦労を苦労ととらえれば、今も苦労してますよ」と笑いながら話してくれた。
初めてなのにそう感じない伊東さんとの会話。
どこまでも他人に壁を作らない自然体な人だなと強く感じた。
独立後は、地元の島根や鳥取など山陰を中心に、東京などからの案件も対応するように。
決して仕事がたくさんあるわけではない山陰で、5年も活動を続けられている理由は、伊東さんが撮る写真の独自性やクオリティも勿論そうだが、その人柄も大きく寄与していると思う。
そして、ライティング。伊東さんは、「のぶの目」というブログで自身の思いを発信し続けている。
そのブログを紙版にしたのが、上述の「EYE」というphoto magazine。
伊東さんの目(EYE)を通じて感じた事と「流行や効率、物質に流されることのない、本来の、それぞれの、リズムを刻むもの」をキーワードにまとめた、サブカルチャーマガジン。
デジタルの時代に、手元に置けて、何か新たなことを始めるきっかけや、誰かのこころをそっと揺さぶるようなモノに。そんな想いが込められている。
現在は、No6まで発行されていて、年4回のペースでリリースされている。
12月には、No7が刊行される予定。
テーマを聞いてみた。
「もちろん、未定です」
伊東さんはとても優しい笑顔で答えてくれた。